出羽三山倶楽部

 

遇曾一処〜帰峰に至る
   
葬列
先ず死ぬ。行道は黄泉の国へと向かう葬列だ。死して初めて異界に分け入る事が出来る。冥府へと送られる者は行者自身だ。自らを自らで送る葬列となる。
   
 死者を山に祀る風習は全国各地にある。「帰峰」=峰(山)に帰る事は験門においても死ぬ事を意味する。人生の終焉が異界へと続いている事は、想像に難くない。異界への入り口は山にあったのだ。

 死者の世界に踏み入らねば、異界には入れぬ。しかし、生身であるならば、死者の世界に踏み入れば二度と戻れまい。娑婆世界と山が地続きのように、験門では死と生をひと続きの世界と捉える。山は行者に異界を体験させる擬死再生の装置となる。

 峰(山)での擬死再生の追体験は、地獄から菩薩に至る十の段階を様々な儀礼を通じ体現する事から十界行とも呼ばれる。十界行の死は、再生への密儀となる。山中で繰り広げられる儀礼は、行者の内証世界そのものと化す。
   
無言之行
九十九折の山道を無言で歩む無言之行は、行者たちの言葉を奪う「畜生界」の行。苦しくとも一言も話す事は許されない。
水盃
水盃を交わして後は、行者は引き返す事が出来ない冥府へ向かう。